■民家に侵入 三嶋製麺所(坂出市)

坂出市高屋町1314
11:00頃〜13:00頃
定休日:日曜
かけ小 200円
いなり寿司 60円

香川には恐るべき店舗形式があります。
特に製麺だけを生業にしていた所は、お客さんに店頭で食べさせることなど想定していません。

初めて訪れる者を迷宮に誘い込む、ラビリンスうどん店のひとつをご紹介しましょう。

でもここは表に「看板」が出ているだけ、琴南町の「三島製麺」よりもお店自体は発見しやすいです。
問題は…表の扉を開けてからでした。

[三嶋画像]

衝撃です。そこのあなた、他人の家の台所でいきなりうどん食べられますか?!異世界への入り口は、町なかの思わぬ所に口を開けているのです。

「三嶋薬品」と書いたお店の横に「三島製麺所」とも書いてある。そしてその扉の横には「郵便局員休憩所」と書いたプレートが…。ほら…これが異世界への入り口です。さあ、勇気をふり絞ってその扉を開けてみましょう。

扉には「そば、あります」との貼り紙。ふむ…明らかにここは製麺所だとわかる。そして製麺所の横で、うどんを食べさせてくれるお店であろうことも容易に想像できる。こういうお店は何軒も行ってるから恐れることはない。いざ…。

ガラガラガラ…扉を開けて入った俺は…なんにもないガランとした部屋につっ立っていたソあれ???普通はセイロやなにか、製麺所だとわかるものがあるのだが…なにもない。部屋の中の少し開いた扉からは、隣の薬品店が見えている。あれ…製麺所はこの入り口ではなかったのか???

その時、部屋の奥のほうで小さな固まりがゴソリと動いた。ビクリと肩を震わせる俺。
よく見ると、それは…老婆だった。老婆が奥の部屋から顔を出したのだ。

「あの…食べれます?」「はいはい、どうぞ〜」俺は老婆に導かれて奥の部屋へと進んで行った。

するとそこは…製麺所ではなく…台所だった。家庭用の普通の流し台があり、コンロに鍋がかかり、食器棚があり、ふつうの家庭用の冷蔵庫が置いてある。どう見てもこの老婆が朝昼晩と料理を作り、食事をしていると思われる、生活感あふれる普通の台所がそこにあった。

そしてまた、「普通の」食卓テーブルがある。老婆はその椅子を後ろに引き「はい、ここどうぞ」と勧めてくれた。俺はこの異空間に足を踏み入れた瞬間からこの老婆に操られたかのような感じになっており、自分の意志かどうか分からないまま、その椅子に座ってしまったのです。

お店に入ったつもりなのに…この見知らぬ老婆の家の、古びた土間の台所のテーブルに座っている。異世界、タイムスリップ、パラレルワールド…色々な言葉が頭に浮かぶ…紛れ込んでしまった…踏み込んでしまった…異様な違和感に襲わながら俺は言葉を失っていた。

(もう…帰れないな)何故だか自分でも分からないが、氷のように冷たく醒めた冷静な気分で、俺はただそう思ったのだった。

「がははははは!」
大きな笑い声で俺はハッと我に返った。
同じテーブルに二人のオヤジが座ってうどんを食べながら談笑しているのだ。

「なんにします?」
おばあちゃんが笑顔でたずねる。
「あ、かけ小で」

ふと見ると男性のお店の人が流し台のまな板の上でトントンとチクワとカマボコを切って丼に入れた。
ここまでは、ほんとに普通の家の台所作業だ。うどんは?ここ、製麺所じゃないの?

男性は丼を持って、流し台の横の扉を開けた。

おお!!!その扉の向こうに…製麺所があったのだ!!!よかった!!!ここは迷い込むともう帰れないパラレルワールドなんかではなくて、三島製麺所だったんだ!!!よかったぁ!!!

ネギと切ったチクワとカマボコがちょこんと乗ったかけうどん。なんかすごい懐かしいような味わいでした。正直、びっくりするような美味しいうどんではなかったけど、おばあちゃんの家で、おばあちゃんの作ってくれたうどんを食べてる感じがして。

大阪に帰ったら、久しぶりに亡くなったおばあちゃんのお墓参りに行こうかなぁ、なんて、暖かいうどんをすすりながら思いました。

かけうどん小 200円
いなり寿司 1個60円
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